YEKINDAR、FURIAで輝きを取り戻す「SNSは悪魔のようなもの」

2025年6月19日木曜日

インタビュー メジャー 選手

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 Liquidでの激動の時間を経て、HLTVのTOP20に2度も名を連ねたYEKINDARが、Virtus.pro時代以来とも言える最高のパフォーマンスを見せている。


YEKINDARはつい先日、FURIAを約3年ぶりのメジャー・プレーオフ進出に導いたばかり。Stage2と3を通して平均1.32という高いRatingを記録し、Austinの中でも屈指の活躍を見せている。

FURIAの再躍進におけるYEKINDARの貢献は大きく、チームメイトのyuurihは彼のことを「俺たちにとって最高の存在」と表現した。


Liquidでの苦悩と葛藤

YEKINDARにとって、この復活はまさに奇跡的なものだった。2024年末、彼の評価はキャリア最低の水準にまで落ち込み、低調な成績のLiquidで苦しい一年を送っていた。Copenhagen Majorには出場すらできず、チームはトーナメントでも好成績を残せず、彼のLiquidでの最後の試合は、Shanghai Majorの準々決勝──後に優勝するSpiritとの一戦だった。


「Liquidで完全に幸せを失ったわけではない」と彼は語る。「ちょっとずつ、幸せが薄れていったような感じかな。」


「でも、今もゲームは好きだし、大会で旅するのも楽しい。練習も、試合の準備も全部楽しんでる。今はそれが何倍にもなって返ってきてるんだ。チームも自分もいいプレーができていて、試合に勝てているから。」

YEKINDARはShanghai MajorでLiquidでの最後の試合を戦った。


Liquid時代の話になると、YEKINDARは「ずっと調子が悪かった」という世間の見方を冷静に否定した。


2022年10月、shoxのベンチ入り後にスタンドインとして加入した彼は、正式加入後の初年度こそ安定したパフォーマンスを発揮していた。チームはプレーオフ常連となり、決勝にも2度進出していた。


ところが、2023年夏に歯車が狂い始めた。Paris Majorで一部のマップでIGLを試したことがきっかけで、実質的にIGLを担うことになり、nitr0とEliGEが去り、PatsiとRainwakerが加入。しかしチームは期待外れの成績に終わり、わずか4ヶ月で再編を余儀なくされた。


YEKINDAR自身、「リーダーとしては完全に失敗だった」と認めており、それが自信喪失につながったと明かす。


その後、cadiaN、さらにTwistzzがIGLを務める中で、チームは方向性が定まらず、プレイヤー同士の役割やプレイスタイルのかみ合わせの悪さも改善されないままだった。


YEKINDARは「それでも、自分自身がもっと良いプレーを見せることはできたはず」と振り返る。

LiquidではIGLにも挑戦したYEKINDAR


SNSでの批判、限界、そして再構築

Liquidでの失敗は「不運な出来事やメンタル的な問題、そして燃え尽きのようなものの積み重ねだった」と彼は語る。


「自分がうまくいかなかったのは、Liquidのせいじゃない。チームメイトや体制のせいでもない。」


しかし、チームが不安定なままだったことで、YEKINDARはSNS上で激しい批判にさらされるようになる。


SNSって悪魔だと思うよ。無視しようとしても、友人や家族、チームメイトを通じて、どうしても自分の耳に入ってくる。」


「コミュニティが選手に厳しいのも分かるけど、それでも度を越してることもある。チームが負けると“YEKINDARが毎ラウンド死んでるせいだ”って言われるんだ。」


「何か打開策を見つけようとしても見つからない。そうすると、どんどん気分が落ちていく。ロールも変わって、自分は柔軟な選手だと思っていても、まったく新しいポジションでは学ぶことが多すぎる。戻ったりまた変えたり、その繰り返し。」


問題が複雑化するなかで、彼はLiquidの支援で脳神経心理学者のカウンセリングを受診。これが彼のメンタルを大きく立て直す転機となった。


人生もゲームも見方が変わった。Liquidには本当に感謝してるよ。」


「自己肯定感を取り戻すことができた。頭の中でスイッチが入ったように、前向きな感覚になれたんだ。」


競技からの離脱と再出発

その後、いくつかのオファーがあったものの、契約には至らなかったYEKINDARは、「しばらくはプレーしないだろう」と判断し、競技から離れて休養を取ることにした。


その間、ビザの問題で長らく一緒に住めなかった恋人がようやくラトビアに移住でき、3月から一緒に暮らせるようになった。


この休みが彼の心と体にどれだけ必要だったかは、後になってからようやく実感したという。

YEKINDARはベンチ入り後に十分な休息を取り、競技への意欲を取り戻した。


「結果的に、すぐに新しいチームが見つからなかったのはラッキーだったと思ってる。2ヶ月の休みで自分を取り戻せたし、再びゲームへの情熱が湧いてきた。」


そして、FURIAが国際ロスターへと舵を切ったタイミングで、彼の代理人が接触。molodoyの加入もあり、ロシア語を話すYEKINDARは理想的な補強だった。


新生FURIAでの挑戦と再生

YEKINDAR加入後、FURIAはPGL Astanaで4位という好成績を収め、The MongolZ、Spirit、Auroraといった強豪相手にマップを奪うなど、期待を大きく上回る結果を残した。


IEM Dallasでは9~12位に終わったものの、FURIAはその結果をさほど気にしていない。イベント間の準備時間が極端に短かったからだ。


ただし、チームとしては課題も感じていた。ブートキャンプ地のマイアミで、チームは「プレイスタイルの再構築」に取り組むことに。


「意見がぶつかる場面もあったけど、その分、お互いの理解が深まった。プレイスタイルの共通認識ができたことで、自信が格段に増した。」


FalleNがAWPを手放し、アンカーポジションを担うようになってからは、CTサイドのコールも分担されるようになり、YEKINDARの経験が大きな武器になった。


チームと共に掴む成功

FURIAはメジャーのステージ1.2を通じてわずか1敗で通過。Virtus.proを相手に、たった8ラウンドしか取らせずに2-0で勝利し、プレーオフ進出を決めた。


YEKINDARは、この成功の鍵をマイアミでのブートキャンプにあると語る。


「10日間くらいかけて徹底的に詰め直した。終盤には、たぶん1回くらいしか練習試合に負けなかったよ。」


彼は今でも自分が“スタンドイン”扱いされているとは感じておらず、チームの全員が彼を温かく迎え入れてくれているという。


「みんな本当に受け入れてくれている。FalleNも俺の強みをすぐに理解してくれたし、みんな話をちゃんと聞いてくれる。」


言葉の壁に悩むmolodoyを支えるのも彼の役割のひとつだ。YEKINDAR自身もポルトガル語を学び始め、Duolingoで11日連続の勉強を続けているという。


未来への選択

FURIAは次に、ステージ2で敗れたpaiNと準々決勝で再戦する。


「初日から言ってたけど、“俺たちが優勝できる”って信じられないなら、Majorに来る意味はない。」


「何が起こるかわからないのがMajorだ。Outsiders、Gambit、GamerLegionだって予想外の躍進を見せた。俺たちは“Majorマジック”を信じているんだ。」


今や、YEKINDARは昔の輝きを取り戻しつつあるが、FURIAへの正式加入についてはまだ未定だ。


「この2ヶ月でプレーオフ進出できたチームに、自分が合っていないとは思えない。もちろん残留は考えてるよ。」


「でも、それを考えるのはこの大会が終わってから。FURIAも俺も、両方が納得できる形で決めたいんだ。」

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