カウンターストライクの競技シーンでは、ヨーロッパや北米のチームが注目を集めることが多い中、最近ではThe MongolZを筆頭にモンゴルのチームが快進撃を見せています。今回は、モンゴルのCS事情や、The MongolZのAWPerである910のストーリーを紹介します。
The MongolZの快進撃:モンゴルCS2の旗手
モンゴルのCS2シーンを語る上で欠かせないのが、プロチーム「The MongolZ」の存在です。2024年6月、彼らはアラブ首長国連邦で開催されたSティア大会『YaLLa Compass 2024』で優勝し、アジアチームとして14年ぶりにS-Tierを獲得しました。
これは2010年の韓国チーム「WeMade FOX」以来の快挙であり、モンゴルeスポーツの歴史に刻まれる瞬間となりました。
さらに、BLAST.tv Austin Major 2025では、The MongolZは決勝に進出し、2位という輝かしい成績を収めました。
これはアジアおよびモンゴル初のメジャー大会ファイナリストとして、若手主体のチームが世界に衝撃を与えた瞬間でした。
The MongolZの成功としては、単なる競技成績にとどまりません。
2025年6月23日未明、モンゴルの首都ウランバートルでは、深夜4時にもかかわらず多くのファンがパブリックビューイングに集まり、The MongolZの勇姿を見守りました。これは、サッカーやバスケットボールのような伝統スポーツに匹敵する熱気だと感じます。
04:00 AM in Ulaanbaatar, Mongolia. pic.twitter.com/ehIwjqfliR
— The MongolZ (@1mongolz) June 22, 2025
モンゴルにおけるCS2
Austin Majorには、モンゴルのチームはThe MongolZとChinggis Warriorsが出場しました。プレイオフ進出をかけたステージでは、国民の2%が視聴していたこともあるほどCS2が普及しています。
そんなCS2が人気であるモンゴルの背景には、いくつかの要因が絡み合っていると思われます。
しっかりとした土壌
まず、モンゴルは人口約340万人の国でありながら、インターネット普及率が80%以上と高く、若年層を中心にデジタル文化が浸透しているという点です。加えてモンゴル政府は、通信・情報技術産業の振興に力を入れており、「デジタル国家」構築を目指しています。
そして、CS2は基本プレイ無料であり、比較的低スペックのPCでも動作するため、経済的なハードルが低いことも普及を後押ししています。
CS1.6をプレイするモンゴル系仏教徒
Young Mongolian Buddhist monk playing Counter Strike 1.6 in the 2000s pic.twitter.com/977O6ouP1h
— Old Internet (@OldInternetFeel) July 30, 2024
文化と国家が育てる
モンゴルの若者は、伝統的な遊牧文化と現代のグローバル文化が交錯する環境で育ち、競争心やチームワークを重視する価値観を持っています。
CS2のような5対5の戦術的なゲームプレイは、こうした文化的特性と共鳴し、チームスポーツとしての魅力を発揮しています。
さらに、eスポーツに関して、国が支援しているという点も大きいでしょう。The MongolZは2025年2月に国指定の「ナショナルチーム」に指名されました。
これにより、スムーズなビザの取得や、給与の保障など、手厚いサポートを受けています。また、国内メディアやeスポーツ関連のコミュニティは、The MongolZの活躍を「モンゴルの誇り」として大きく報じ、若者だけでなく幅広い層にCS2の存在感を広げていることも影響していると思います。
"THE MONGOLZ” БАГ МОНГОЛ УЛСЫН ҮНДЭСНИЙ ШИГШЭЭ БАГИЙН БҮРЭЛДЭХҮҮНД НЭГДЛЭЭ#The_MongolZ#E_sport pic.twitter.com/91dMQQktOC
— Nomin Chinbat (@NominChinbat) February 28, 2025
この点は、IEM Rio Majorでビザ取得が困難だったBad News Eaglesを、文化・スポーツ大臣が救済した件と通ずるものがあります。
参考記事: BNEのIEM Rio Majorへのビザ取得に政治家が動く
910の過酷な旅
The MongolZはAustin Majorで決勝戦の前に、910のエピソードを公式Xで投稿しました。
910 used to live in Darkhan, far from Mongolia’s capital, Ulaanbaatar.
— The MongolZ (@1mongolz) June 22, 2025
All the underground LAN tournaments with modest prize pools were held in the capital, so he had to take the train for hours just to compete.
Those LANs were dog-eat-dog contests. Winning was a necessity. He… pic.twitter.com/vM3XDLCK3V
[和訳]
「910はモンゴルの首都ウランバートルから遠く離れたダルハンという町で育ちました。Counter-Strike(当時はCS:GO)のLAN大会は主に首都で開催され、少額の賞金を目指して競い合う場でした。
910にとって、これらのトーナメントに参加するには、6時間以上もの列車移動が必要でした。そして彼には往復の旅費を賄う余裕もなく、片道の切符だけで挑むことが常でした。
負ければ、食事や宿泊、帰宅の手段を失うリスクを背負いながら、彼は"勝つこと"が生き残るための必須条件である過酷な環境で戦いました。 」
この厳しい環境が、910を強靭なプレイヤーに育て上げました。彼にとって、勝利へのプレッシャーは単なるゲームの結果ではなく、生きるための闘いでした。
そんな彼の努力とスキルは、やがてThe MongolZというチームの目に留まり、歴史的な成功への第一歩となりました。
Dota 2からCS:GOへ
910のゲームキャリアは、Counter-Strikeだけに留まりません。彼は元々、Dota 2のプロプレイヤーとしてThe International(TI)を目指していました。
しかし、モンゴルでCS:GOの人気が高まるにつれ、彼はCS:GOに転向。すぐにトップAWPerとしての地位を確立しました。
モンゴルCSからアジアCSの発展へ
今回のThe MongolZの歴史的な成功は、モンゴルがeスポーツの新興勢力として世界に名を刻む第一歩ではないでしょうか。国民の熱狂的な支持、若者の情熱、そしてデジタル文化の土壌が揃うモンゴルは、今後さらにCS2シーンを牽引し、アジアを代表するeスポーツ大国となる可能性を秘めていると感じます。
日本を含むアジアのeスポーツファンにとって、モンゴルの活躍は刺激的なニュースです。CS2を通じて、国境を越えた競技の魅力と、若者の夢が交錯するモンゴルの物語は、アジア全体のCSシーンの新たな地平を開くかもしれません。
首都ウランバートルの観覧車にライトアップされたThe MongolZ。このような光景が日本でも見ることが出来る日を願っています。
— kRo's corner 🇲🇳 (@kroscorner) June 22, 2025
日本でもなんとか盛り上がって欲しいよね
返信削除面白い記事ありがとう